数学の裏側

 数学は所詮人間が作ったもの。そこには教科書では語られない人間味溢れる姿がある。
このページでは、普段の数学を裏側から覗いてみることにしよう。ちょっと違った数学の一
面に気づくかもしれない...。そうしたら、少しは数学が好きになるかな?

<< 目 次 >>

(1)三角関数補角の公式   (2)三角形の面積     (3)負の数の計算
(4)1次方程式          (5)計算の省略       (6)1次不等式の解法
(7)2次関数のグラフ      (8)平方完成         (9)平方完成の回避
(10)三角比の定義        (11)分数の足し算      (12)和積の公式の回避
(13)累乗の記号         (14)凹凸の判断       (15)公式の語呂合わせ
(16)回文数            (17)文系と理系の識別   (18)いろいろな計算




三角関数補角の公式

  三角関数の公式に、 sin(180°−θ)=sinθ
                cos(180°−θ)=−cosθ
                tan(180°−θ)=−tanθ

 というものがある。この公式の例題として、次のような解き方を説明すると、生徒は怪訝な
 顔をする。

  sin125°=sin(180°−55°)=sin55°=0.8192
  cos125°=cos(180°−55°)=−cos55°=−0.5736
  tan125°=tan(180°−55°)=−tan55°=−1.428


 どうも生徒は、125°=180°−55°という発想が苦手らしい。(教える側にとっては、
ごく自然な変形だと思うのだが・・・・?)

 これに対して、次のような計算を示すと、「分かった!」という顔をする。

  sin125°=sin(180°−125°)=sin55°=0.8192
  cos125°=−cos(180°−125°)=−cos55°=−0.5736
  tan125°=−tan(180°−125°)=−tan55°=−1.428


 θ の補角を頭の中で計算し、それを180°から引いてから公式を使うよりも、公式を先
に使って後はゆっくり式計算を楽しむという方が、生徒にとっては分かりやすい解法のよう
である。


三角形の面積 
 (高校3年生 K.K.君からの投稿)

三角形の面積   小学校の算数の時間、先生が「三角形の面積をどう
  やって求めるか?」という問題を出した。

   普通この場合、同じ三角形を2つ並べて平行四辺形
  を作り、三角形の面積を平行四辺形の面積に帰着さ
  せて求めるという方法で、説明される。




   僕は、長方形の面積は分かるが、三角形の面積はよく分からなかった。そこで、三角
  形を書いた紙を切り取り、三角形の2辺の真ん中を結ぶ折れ線で折り返し、さらに、左
  右の頂点が今折り返した頂点に重なるように折り返して、小さい長方形を作った。その
  面積を2倍して、三角形の面積を求めた。

   このことを先生に話したら、褒めてくれた。


負の数を含む計算

 負の数を含む計算に関して、3人の方から投稿をいただきました。負の数の計算は、中
学校に入っての最初の難関ですが、皆さん各自工夫されて克服しているようです。


 (高校3年生 E.H.君からの投稿)

 中学生の頃、「引き算で分からなくなったら、数字の差はいくつかを求めろ」といわれた。
これに対して僕は次のように考えた。
 例えば、5−7 の計算で、まず、7 と 5 の差2 を求め、7が5になるには、あと−2 が
必要ということで、その−2 が答になる。
 この考え方は、自分にとって、とても役に立った。


 (高校3年生 T.S.君からの投稿)

数直線  5−7 という計算は、確か学校では、7 から5 を


引いて、マイナスを付ければよいというように教えられたが、当時はよく理解できなかった。
自分で数直線を思い浮かべ、5 から1 ずつ7 回左へ移れば、−2 になると考えると、分か
りやすく答が出た。


 (高校1年生 Y.M.君からの投稿)

 中学のとき、正負の計算で先生はやり方だけ教えたけど、よく分からなかった。家に帰っ
て、例えば、−5+2 のような計算を、数直線を書いてやったら分かるようになった。−5
から、右の方へ 2 だけ移動すれば、3 という答になるということが実感できた。


1次方程式

  6X−4=2X を解け。
    6X−2X=4 より、(6−2)X=4 よって、4X=4  ゆえに、X=1

 授業で上記のような計算で方程式を解くと、「はてな?」という顔をする生徒は少なくない。
小学校の算数の時間のように、次のような説明をすると、生徒は、「わかった!」という顔
をする。

  6X−4=2X を解け。
    XXXXXX−4=XX より、XXXX−4=0 よって、4X=4  ゆえに、X=1

 6X を、「6かけるX」という認識で計算したものが前述のもので、6X を、「X を6個加えた
もの」という認識で計算したものが後述のものである。やはり、掛け算で考えるより、足し算
で考えた方が分かり易いのかもしれない。もっとも、掛け算をプログラミングするとき、足し算
がベースになるので、生徒の認識もあながち不自然とは言えない。


計算の省略 (高校2年生 S君からの投稿)

 数学の先生というと、途中計算を端折る傾向がある。例えば、

  Y=X+X2・2X を計算すると、    Y=X+2X3


としがちだが、生徒の側からは、分かりづらいという。途中計算のカラクリを確認しながら、
計算を進めると、生徒にとっては理解しやすいようだ。

  Y=X+X2・2X を計算する。

     X2・2X=2X・X2 で、 X・X2=X1+2=X3 より、  Y=X+2X3   

 少しの労力で、生徒の理解が進めば、これほど嬉しいことはない。


1次不等式の解法

 新学習指導要領において、中学校での不等式の扱いは軽減され、高校になって初めて
本格的に不等式の理論を学習するといっても過言ではない。

 不等号という記号も、単なる記号としてしか扱われないので、不等式の扱いも形式的に
ならざるを得ないのが実状である。

 今まで、不等式の解法というと、次のように解いてきた。
  不等式 3X<5X−4 を解け。

     3X−5X<−4 より、 −2X<−4  よって、  X>2


 ただ、この解法だと、両辺を負の数で割るときに、不等号の向きが反対になるということ
を覚えておく必要があり、等式の場合との違和感を感じる原因にもなっているようだ。

 割る数の正負を気にしないで済むようにするには、常に、Xの係数が正になるように移項
することを考えればよい。最近、次のような解法があることを知った。

  不等式 3X<5X−4 を解け。

     4<5X−3X より、 4<2X   よって、  2<X 


 どちらが分かりやすいかは、人それぞれだろう。生徒たちに聞いてみても、それぞれを
支持する声があった。

 私的には、どうも「2<X」という書き方に違和感を持ってしまう。

「X」を主語ととらえ、「Xは2より大きい」は、やはり、「X>2」と表現したい。英語のSVC
の順序を重視する立場である。それに対して、「2<X」は、答えとしてはあっている訳で
あるが、読み方が、どうしても「2はXより小さい」となってしまい、「2よりXは大きい」とは
読みづらい。数直線での 2 と X の位置関係から、「「2<X」が支持されているようだ。

 2次不等式 (X−1)(X−3)>0 を解く場合も、解 X を主語ととらえ、X<1、X>3 と
書いてきたが、この書き方は、最近の教科書からは淘汰されつつある。

 現在、数直線でのXの位置を考えて、「X<1、3<X」とする書き方が主流で、「Xを主語
としない」形式的な記号化が進んでいる。

 果たして、このような不等式の扱いは、その後の数学の理論展開に支障はないのだろ
うか?支障はないとしても、多少違和感を持つのは私だけだろうか?


2次関数のグラフ

 いま日本の多くの高校において、1年生では「2次関数」を学習していると思う。その中
で、次のような計算の正解率が極端に悪いということを実感している方はいないだろうか?
  2次関数 y=2(x−1)2+2において、x=0 のときの y の値を求めよ。

     答えは、 y=2(−1)2+2=4


 この計算は、2次関数のグラフを書いたり、y 軸との交点を求める際に必ず現れるもの
であるが、意外にも正しく計算できない生徒が少なからず存在する。

 上記の計算の肝要なところは、(−1)2 の処理の部分である。これを、−12 と勘違い
して、−1 とするようだ。ある調査によると、(−1)2 と −12 の区別が出来ない生徒は、
2割程度いるらしい。

 生徒は、括弧の使い方に無頓着だ。たとえば、3と−4をかける場合、平気で、3×−4
としてしまう。ここは、やはり、しっかり 3×(−4)と書くようにしたい。

 このような計算力不足を補うかのように、中学校の教科書も変化しているようだ。

 2次関数のグラフを書く場合、これまで例えば次のような対応表を作らせてきた。

対応表
−2 −1
y=x2 16

 この流れで、高校でも対応表を計算させ、 y=2(x−1)2+2 のようなグラフを書かせて
きた。しかし、どうも教科書を見ると、このような教え方は旧式らしい。教科書では、確かに
最初の方では対応表を用いて説明しているが、主流は平行移動の考えである。あたかも
生徒の計算力不足を見透かしたかのような対応になっている。

 生徒にあまり計算をさせまいと、中学校の教科書でも、次のような雰囲気になっている。

対応表
−2 −1
y=x2 16
   −3 −1

 上記では、原点から x の値が 1 ずつ増えると、1、3、5、7、・・・ と y の値が増えていく
ということを言いたいようである。この性質は、 n2−(n−1)2=2n−1 から、明らかであ
ろう。

 この y の変化量に注目するという視点は、グラフを書く場合に次のように反映される。

         2次関数のグラフ

 すなわち、原点から 1 ずれるごとに、1、3、5、7、・・・ と点を目盛っていけば、それらし
い2次関数のグラフが書けてしまう。もう、x2 の計算は必要ないくらいだ。
 もし、関数が、y=2x2 ならば、それぞれ2倍して、2、6、10、14、・・・ と考えればよい。

 高校で、実際にこのような教え方をされている方がおられて、ある程度の成果をあげてい
ると聞く。でも、はたして、このようなグラフの書き方で本当に関数の意味が分かったといえ
るのであろうか?グラフが書けただけで、そのグラフを使って、関数を読み取ることは可能
なのだろうか?今度その方に会う機会があるので、質問してみようと思う。


平方完成

 「2次関数」の学習で、「平方完成」という式変形は、2次関数の一般形を標準形に処理す
る上で避けて通れない計算である。
 中学校では解の公式を教えなくなった分、この「平方完成」という方法を使って、問題練習
する機会が増えたと思うのだが、生徒の定着率は、驚くほど低い。

  2次方程式 x2+2x=3 を解け。

     両辺に、1を加えて、x2+2x+1=4
   よって、(x+1)2=4 より、 x+1=±2  だから、 x=1、−3


 平方完成は、分かってしまえば何でもない計算であるが、生徒にとっては、分かるまでが
非常に辛い計算であるようだ。

 教科書では、平方完成は次のような式変形で教えられる。これは、中学校での2次方程
式の解法を意識した式変形である。

  2次式 x2+4x を平方完成せよ。

     x2+4x=x2+4x+4−4
          =(x+2)2−4 


 それに対して、次のような教え方もある。(この場合は「 x の係数の半分」ということを呪文
のように唱える。)

  2次式 x2+4x を平方完成せよ。

     x2+2ax=(x+a)2−a2  という公式を用いて、

      x2+4x=(x+2)2−22=(x+2)2−4


 私自身は後者の方法を採用することが多いが、どうも、このような式変形は、計算が不得
手な生徒には大海をさまようように感じるらしい。かといって、教科書のような教え方が分か
りやすいとも言えない。生徒に聞くと、後者の方が分かりやすいと言う。2次関数を教えると
きはいつも、今年はどちらで教えようかと悩みは尽きない。


平方完成の回避

 平方完成も、 x2+4x のような基本形がやっと出来るようになった生徒にとって、その応
用形、たとえば、 2x2+4x のような平方完成になると、極端に難しく感じるらしい。

 その理由は明らかである。生徒は、次のような計算ミスをしがちである。

  2次式 2x2+4x を平方完成せよ。

     2x2+4x=2(x2+2x)=2(x+1)2−1 (誤り)

  上記の計算は、正しくは、

     2x2+4x=2(x2+2x)=2{(x+1)2−1}=2(x+1)2−2


 今の生徒の行う計算の特徴として、括弧の使い方が不得手である。だから、−52 のよう
な計算も、25と誤答する割合は高い。

 このような生徒の計算力を考えると、平方完成を教え込むことは無意味のように感じる。

結局のところ、平方完成させることによって、放物線の軸の式と頂点の座標が求まればい
いわけで、次のような回避策が考えられる。

 教科書の順番から言えば、2次関数の学習の前に2次方程式を学習しているので、道具
として、2次方程式の解法が使える。
  放物線 y=2x2+4x の軸の式と頂点の座標を求めよ。

     2x2+4x=2x(x+2)=0 より、 x=0,−2

   x2 の係数2は正の数なので、グラフは下に凸であり、

  上の計算から、グラフは、x 軸と、2点(0,0)、(−2,0)で交わる。

   放物線は、軸に関して線対称なので、

   2点(0,0)、(−2,0)の中点(−1,0)を通り、

   y 軸に平行な直線 x=−1 が軸の式となる。

    また、頂点は、軸の上にあるので、 x=−1 から、y=−2 となり、

   頂点の座標は、(−1,−2)である。

 もちろん、微分法を知っていれば、もっと簡単に軸や頂点を求めることができる。果たし
て、平方完成は、微分法の学習までの「つなぎ役」なのであろうか?


三角比の定義

 数学を教えていられる方が、共通に多分感じている今の生徒の弱点をあげるとすれば、
計算力そのものであろう。特に、比の計算が苦手なようである。

 たとえば、比として、「 1 : 2 」 ということは理解できても、比を、「 1/2 」と表したりする
と、突然、拒否反応を示す場合が多い。

 教科書では、三角比の定義そのものが分数表示の比で定義されるので、小学校・中学
校で普通にできていた比の計算が、全く違う種類の計算と映るようで、計算の手が止まっ
てしまう。

 三角比の定義の導入そのものを見直す必要がありそうだ。

 釜石南高校の宮本次郎さんが次のような導入を考えておられる。

直角三角形
    斜辺の長さが 1 の直角三角形において、

     対辺の長さ = sin θ  底辺の長さ = cos θ

    と書くことにする。



 この導入により、今までの三角比の定義が、小学校・中学校の比の定義の延長線上に
自然に組み入れられるのではないだろうか。

直角三角形
    左図において、  y = r・sin θ  x = r・cos θ
   なので、   sin θ = y/r   cos θ = x/r
   と書ける。



 実際の応用の場面では、三角比の定義そのものよりも、むしろ、

          x = r・cos θ 、 y = r・sin θ

を直接使う場合がほとんどである。無理をして、分数の比で三角比を教えないで、上記の
形で教えた方が生徒にとっても負担は少なくなるかもしれない。


分数の足し算

 分数の足し算というと、私は次のように計算してしまう。

    分数計算

 でも、このような計算は、計算力が不確かな生徒にとって評判は芳しくない。次のように
計算すると納得するようだ。

    分数計算

 2つの計算に大きな違いはないように思うが、生徒にとっては大きな壁が2つあり、それ
を一気に計算しているので分かりにくいようだ。

 (壁その一) 共通の分母(54)を発見して、それぞれを通分すること。
 (壁その二) 分母が同じ分数同士の足し算。

 2つの壁のうち、最初のものが一番困難さを感じるようだ。それが何故なのか、今まで気
がつかなかったが、その理由がようやく判明した。

 平成17年5月21日放送の「世界一受けたい授業!!」(NTV系 土曜夜7時57分〜8時54分
で、百ます計算で有名な陰山英男さんが明解に答えられていた。

 今の小学校では、上記のような計算を機械的に求める方法を教えてはいない!

番組では、次のような機械的な計算方法を紹介された。
             (この方法は昔から知られている方法らしい。

     分数計算

 この方法は、最小公倍数を求める方法を巧妙に利用している。でも、分かりやすいことは
確かだ。今度、通分が苦手な生徒に、この方法をこっそり教えてみよう!


和積の公式の回避

 「数学II 」で三角関数の加法定理を学ぶが、その周辺は公式の嵐で、なかなか定着しな
い分野である。私自身の経験からも三角関数の微分積分で練習を積んで、ようやく様々な
公式(倍角・半角・3倍角・和積・積和・単振動の合成等)が身に付いたように思う。

 授業時数の減少の影響で、じっくり練習する時間が確保されないまま、通り一遍の話で
終わっているというのが、日本全国共通の悩みなのではないだろうか?

 その学習状態で進級し、「数学III 」で三角関数の微分を学習する段になって、今までの
積み残しによる問題が一気に噴出する。

 教科書では和積の公式を用いて、sinθの微分の公式を証明している。一昔前だったら、
大抵の生徒は和積の公式等を覚えていて円滑に証明が進んだものだが、最近は、定着
率が低いので現地調達方式風に再度説明を補足しないと授業が進まないというのが実
状だ。そこで授業の流れが止まってしまうわけで、かえって授業をわかりにくくしてはいな
いかと危惧するばかりである。

 そこで、和積の公式を用いないで、sinθの微分の公式を証明しようと思い立った。生徒
たちは、和積の公式は覚えていなくても加法定理は何とかおぼろげながら覚えているよう
なので、加法定理と極限の計算で乗り切れるものと判断した。

極限値の計算

 この証明方法が教科書の証明に対して、どれくらい分かりやすくなったのか、または分か
りにくくなったのか、是非他の方のご意見を伺いたいものだ。


累乗の記号

 「数学II 」で学ぶ学習項目の中で「三角関数」の定着率が悪いのはよく知られているが、
それに匹敵するぐらい悪いと感じるのは「指数・対数」である。

  (誤答例)

     23=6  としたり、  2x を 2x と書いてしまう


 生徒が、なぜ上記のような計算ミスをするのか、よく考えてみると、やはり「23」といった累
乗の書き方に原因があるのだろうと思う。

 この累乗の記号は慣れてしまえば便利な記号であるが、初学者がノートに取る際、よほど
注意しないと、「23」を「23」と書き誤って、「23」を「2×3」と勘違いしたまま覚えてしまったり
もしくは、「23」を「2×2×2」と計算するよりも「2×3」と計算する方が楽なので意図的にそ
う覚えてしまったりしているのではないだろうか?

 インターネットの世界では、「23」を「2^3」と書く慣わしになっている。このように、指数「3」
を何らかの形で強調しない限り上記のような計算ミスを根絶することは難しいだろう。

 そこで、私は、累乗の記号「23」を、

           23=exp2(3)

などと書くことを提案したい。このような形の記号を用いると、

           a=N  →  x=log

という忘れやすい式も

           exp(x)=N  →  x=log

となり、「左辺のexpを右辺に持って行くとlogに変わる」という単純な図式になるのだが?


凹凸の判断

 「数学III 」で学ぶ学習項目の中で、曲線の概形を描く問題は一つの山場だろう。そこでは、
「数学II 」で学んだことよりも深い理論で、より詳しいグラフが描かれる。

 その際、次の公式が用いられる。

    関数 y=f(x) において、ある区間で、

 f’(x)>0 ならば、f(x) は単調増加    f’(x)<0 ならば、f(x) は単調減少

 f”(x)>0 ならば、f(x) は下に凸      f”(x)<0 ならば、f(x) は上に凸

 f’(x) の増減で f(x) の凹凸を考えればいいわけだが、なかなかこの理論は生徒にとって
難関なようだ。

 この公式に対して、高校3年生の N.T.君が斬新な早わかり記号を考案してくれた。

 f(x) が単調増加であることは、矢印の記号を用いて、「」と表される。単調減少ならば、
」である。

 f”(x)>0 ならば、f’(x) は単調増加であるが、このとき矢印「」を、f’(x) の矢印の下側
に書く。

 f”(x)<0 ならば、f’(x) は単調減少であるが、このとき矢印「」を、f’(x) の矢印の上側
に書く。

 そうすると、ごく自然に曲線の凹凸が浮かび上がってくるから不思議だ。このような矢印の
記号による凹凸の判断の簡便法は私にとっては初見の事柄である。皆さんにも普及させた
いので、記号をまとめて整理しておこう。

増減と凹凸の視覚化
f’(x)>0、f”(x)>0 の場合 f’(x)>0、f”(x)<0 の場合
単調増加で、下に凸 単調増加で、上に凸
増減凹凸   増減凹凸
  
f’(x)<0、f”(x)>0 の場合 f’(x)<0、f”(x)<0 の場合
単調減少で、下に凸 単調減少で、上に凸
増減凹凸 増減凹凸

 上図で、黒矢印が第1次導関数 f’(x) のもの、青矢印が第2次導関数 f”(x) のもの
で、一方の始点から他方の終点に向かうように赤矢印(円弧)を描けばよい。

 一方の始点から他方の終点に向かうように矢印を描くとき、円弧になる場合はただ一つ
の場合しかないので、上記の記号で確定される。


公式の語呂合わせ

 中学までは暗記に強かった人も、高校に上がる頃になると誰でも記憶力は落ちてくる。
それまで暗記に頼って数学の試験をクリアしてきた人たちは、高校に入って数学の点数
が伸び悩むことが多い。計算力の養成が主だった中学と違って、数学的な見方、考え方
が中心の高校数学は、中学数学と質的に大きく異なるのだ。そのような質的変化と記憶
力の減退が複雑に絡み合って、「高校数学は難しい!」「中学まで数学はできたのに!」
という声になる。暗記でこれまでの数学の勉強を乗り切ってきた人たちにとって、高校数
学という大きな壁が立ちはだかっているように感じるのかもしれない。

 記憶力の減退は、誰でもが経験することである。先人達はどのようにして克服している
のだろうか?

 私自身の経験から言えば、自分の言葉で考え、自分なりの意味づけを、覚えるものに
対してつけていくと忘れにくいようだ。TV番組でもよくやっているが、円周率を非常に長
い桁数覚えている人は、数字の並びに言葉を当てはめ、物語風に覚えているらしい。

 そのような語呂合わせで私が美しいと思うものがある。最初に、この語呂合わせを考え
た人を私は尊敬する。

三角関数の3倍角の公式

        正弦の3倍角の公式

            (サンシャイン、引いて風がにしみる

 これ以上に美しい語呂合わせを私は知らない。


回文数

 上下(または左右)どちらから読んでも同じ文になる詩歌・語句を回文(かいぶん、または、かい
もん)という。

 たとえば、「新聞紙(しんぶんし)」、「竹薮焼けた(たけやぶやけた)」などがよく知られている。
このような話を私の周りの人に喧伝したら、次のような回文をスラスラ言われる方がいられて、思
わず感動してしまった。

       長き夜の 遠のねぶりの 皆目覚め
       波乗り船の 音の良きかな

       流る雪 春日に昼は 消ゆるかな

このような言い回しは、英語にもあるようだ。有名なものとして、

 Madame,I’m Adam. And Able was I ere I saw Elba
   (マダム、私はアダム。そうして、エルバを見るまではできた。)
                          −James Joyce 著 Ulysses(Paris 1922)より
があげられる。

 数学において、このような性質を持つ数のことを、回文数という。詩歌・語句の場合とは違って
このような回文数は、任意に作られる。たとえば、12321、2222、・・・。

 しかし、ある性質を満たす回文数を作ることは、非常に難しい。

例 ある6桁の回文数は、95で割り切れ、しかも、その商も回文数になるという。このよう
  な回文数をすべて求めよ。
               (算数オリンピック’95 (読売新聞 1995.7.16 付朝刊より))



 皆さんも勉強に疲れたら「ちょっと一服!」ということで、考えてみてはいかがでしょうか?

 答えは次の通りです。

 求める回文数は、

        a・105+b・104+c・103+c・102+b・10+a

とおける。ただし、a、b、c は、1≦a≦9、0≦b≦9、0≦c≦9 を満たす整数とする。

 このとき、 a・(105+1)+b・(104+10)+c・(103+102) において、

 105+1−61、104+10−35、103+102−55 は、95で割り切れる

ので、

    a・105+b・104+c・103+c・102+b・10+a−61a+35b+55c も、95で割り切れる

問題の条件より、

    a・105+b・104+c・103+c・102+b・10+a

が、95で割り切れるので、 61a+35b+55c も95で割り切れる。

 従って、整数 k を用いて、 61a+35b+55c=95k  と書ける。

 ここで、61=95−34、55=95−40 なので、 −34a+35b−40c=95k

としても、一般性は失われない。

 このとき、 −34a=−35b+40c+95k において、右辺は5で割り切れ、5と61は互

いに素なので、aは、5の倍数となる。 よって、1≦a≦9 より、a=5 となる。

 いま、−170=−35b+40c+95k の両辺を5で割って、 −34=−7b+8c+19k

として考える。 このとき、 7b−8c=19k+34

 0≦b≦9、0≦c≦9 なので、−72≦7b−8c≦63 である。

  よって、−72≦19k+34≦63 より、−106≦19k≦29

この不等式を満たす整数kは、k=−5、−4、−3、−2、−1、0、1 の7通り。

 k=−5 のとき、7b−8c=19k+34=−61 を満たす b、c は存在しない。

 k=−4 のとき、7b−8c=−42 を満たす b、c は、b=2、c=7

   このとき、回文数は 527725 で、この数を95で割った商は、5555 で確かに回文数で
  ある。

 k=−3 のとき、7b−8c=−23 を満たす b、c は、b=7、c=9

   このとき、回文数は 579975 で、この数を95で割った商は、6105 で回文数にならない。

 k=−2 のとき、7b−8c=−4 を満たす b、c は、b=4、c=4

   このとき、回文数は 544445 で、この数を95で割った商は、5731 で回文数にならない。

 k=−1 のとき、7b−8c=15 を満たす b、c は、b=9、c=6

   このとき、回文数は 596695 で、この数を95で割った商は、6281 で回文数にならない。

 k=0 のとき、7b−8c=34 を満たす b、c は、b=6、c=1

   このとき、回文数は 561165 で、この数を95で割った商は、5907 で回文数にならない。

 k=1 のとき、7b−8c=53 を満たす b、c は存在しない。

 以上の計算から、所要の条件を満たす回文数は、   527725

のただ一つである。

(コメント) ちょっと難しかったかな?


文系と理系の識別

 日本の高校の進学校と言われるところでは、たいてい2年もしくは3年で文系・理系に分
かれた教育課程を編成している。その中で多様な科目選択により、生徒個々人の多様な
要望に応えている。

 そのような現状の中で、「文系・理系」というのは、果たして意味のある分け方なのだろう
か?生徒の動向を見ていると、どうも「数学ができるから、理系」「数学ができないから、文
系」と単純に考えているとしか思えない。高校の文系・理系というのは、単に、重点をおい
て学習する科目の比重の差くらいしかなく、その人の生涯を決定するものではない。

 高校での文系・理系といった曖昧さとは違って、社会でいうところの、「文系・理系」という
のは、その人の一種の特性を表しているように思う。

 最近、「『文系人間・理系人間』を考える医者」という文を、外科医の平岩正樹さんという
方が、講談社 本 (2005年3月号)に投稿されているのを読ませていただいた。

 そこでは、「平岩式文系理系判別法」なるものに目を引かれた。

次は、文系と理系を識別するクイズとのことである。

  問題  次の□に数字をうめよ。

     2  □  6  8  10

   さて、あなたなら、□に何を入れますか?

 平岩さんによれば、□に入れる数字として、「4」と即答する人は、「文系」らしい。ちょっと
回答をためらう人は「やや理系」らしい。

 私なんか、「4」と即答してしまったから、完璧に「文系人間」と判定されてしまった。

確かに、よく考えてみれば、4つの情報があるわけだから、例えば、4次関数

      y=ax4+bx3+cx2+dx+e

において、 x=1 のとき、y=2、 x=3 のとき、y=6、 x=4 のとき、y=8、x=5 の
とき、y=10 となるように係数の間の関係を求めれば、

  b=−13a 、c=59a 、d=2−107a 、e=60a

となることが、簡単な連立方程式の計算でわかる。そこで、x=2 のとき、y=5 となるよう
に、a の値を定めれば、 a=−1/6 となる。

このとき、4次関数 y=(-1/6)x4+(13/6)x3+(-59/6)x2+(119/6)x−10 は、

      x=1、2、3、4、5 に対して、y=2、5、6、8、10

という性質を持つ。上記の計算から分かるように、x=2 における任意の yの値に対して
a の値が定められ、所要の性質をもつ関数を決定することができる。

 すなわち、□に入る数は、無数にあり一つには決まらないということである。

 平岩さんによれば、与えられた問題を見て「2飛び」という規則を発見し、したがって、□に
4 が入るというのは、その人の持った一つの主観であって、普遍的な考えではないという。
どうも、「主観を普遍的なもの」と考えるタイプの人間が、文系人間と判定されるらしい。


いろいろな計算

 平方根の計算ができる電卓が、ほぼタダ同然で手に入る世の中にあって、いろいろな数
学的値が実感できない人が増えつつある。

 平方根3 の値が把握されていないものだから、底辺、垂辺の長さが、1 と 2 の直角三角形を
書くと、斜辺の長さは、何も考えずに、平方根3 と自信満々に答える。相当に、2:1:平方根3 の比
をもつ三角形の呪縛にはまっているという感じである。

 平方根3 は、2 より小さい数なので、この3辺の組合せでは、決して斜辺の長さとはなり得ない。
小学・中学・高校において、数の値を把握する訓練の必要性を痛感する。

 例えば、中学3年で学習する「分母の有理化」は、数の値を把握するための計算なのであ
り、何も「分母に無理数があると美しくないから」、という理由で有理化するわけではないの
である。

 ここら辺の認識が現在の中学・高校生にはないように感じられる。だから、分母に無理数
を残したままでよいというと、一様に生徒は戸惑いを覚えるようだ。いままで、機械的に分母
の有理化を行ってきたツケだろう。

 みなさんは、次の問にすぐ答えることができるだろうか?

問 平方根3 =1.732 であることを用いて、次の数はおおよそいくら位か?

(1)              (2)
      平方根3の逆数             平方根3÷(平方根3−1)

                                    (答) (1) 0.577  (2) 2.366

 ここでは、いろいろな値を自らの手で計算して求める方法についてまとめてみたい。

 例 平方根23 の値を小数第1位まで正しく求めよ。

   (解) 42<23<52 なので、4<平方根23 <5
      よって、平方根23 =4+α (0<α<1) とおける。
      両辺を平方して式を整理すると、α2+8α−7=0 という2次方程式が得られる。
      このとき、10α(αの10倍を考えることにより、αの小数第1位を求める!)をX とおく。
      α=X/10 を、さきほどの2次方程式に代入して式を整理すると、
                      X2+80X−700=0
グラフによる解法 F(X)=X2+80X−700 とおくと、F(7)=−91<0、F(8)=4>0
 したがって、左図より、10α=X=7.・・・ となるので、
  α=0.7・・・ であることが分かる。
 以上から、
        平方根23 = 4.7・・・
 となる。この方法を順次続ければ、平方根の値により近い小数が
 得られる。
 (因みに、電卓を用いれば、平方根23 = 4.79583・・・ である。)

 例 3を底とする2の対数 の値を小数第1位まで正しく求めよ。

   この値は、関数電卓を用いれば、3を底とする2の対数 =0.630929746・・・ である。関数電卓がなく
  ても、小数第1位ぐらいまでは手計算で、いつも求まるようにしておきたいものだ。

   (解) 26<34 より、2<3
0.666・・・ だから、3を底とする2の対数 <0.666・・・
      また、35<28 より、30.625<2 だから、0.625<3を底とする2の対数
      したがって、0.625<3を底とする2の対数 <0.666・・・ となり、3を底とする2の対数 =0.6・・・ であることが
      分かる。

     この手計算で、3を底とする2の対数 の小数第2位を決定することは難しい。
    220=1048576、313 =1594323 で、220<313 より、2<30.65 だから、
    0.625<3を底とする2の対数 <0.65 を求めるのが精一杯である。

練習 3を底とする5の対数 の値を小数第1位まで正しく求めよ。

   (解) 52<33、37<55 より、1.4<3を底とする5の対数 <1.5 だから、3を底とする5の対数 =1.4・・・

 例 10を底とする2の対数10を底とする3の対数 のおおよその値を求めよ。

   (解) 23=8 はほぼ 10 だから、310を底とする2の対数 もほぼ 1   よって、10を底とする2の対数 = 0.3・・・
       23<32<10 だから、310を底とする2の対数 <210を底とする3の対数 <1
      よって、0.45・・・<10を底とする3の対数 <0.5 の範囲の数であることが分かる。

 例 220 は何桁の数で、その首位の数は何か?ただし、10を底とする2の対数 =0.3010 とする。

   (解) 10を底とする2の対数 = 0.3010  だから、2010を底とする2の対数 =6.02
      よって、106<220<107 となり、7桁の数であることが分かる。
      また、0<0.02<0.3010 より、6<6.02<6+10を底とする2の対数
      したがって、106<220<2・106 だから、220 の首位の数は、1 である。
      (因みに、220 =1048576 である。)

 例 (1/2)20 は小数第何位に初めて0でない数字が現れるか?また、その数字は何か?
   ただし、10を底とする2の対数 =0.3010 、10を底とする3の対数 =0.4771 とする。

   (解) −2010を底とする2の対数 = −6.02 なので、10-7<(1/2)20<10-6
      よって、小数第7位に初めて0でない数字が現れる。
      また、−6.02=−7+0.98 で、2×0.4771<0.98<1 だから、
      −7+2×10を底とする3の対数 <−6.02 <−6 すなわち、9・10-7<(1/2)20<10-6
      したがって、求める数は、9 である。
      (因みに、(1/2)20 =0.00000095367・・・ である。)

 例 (0.99)10 の値を小数第2位まで正しく求めよ。

   (解) 2項定理 (a+b)=a+nan-1b+n(n-1)/2an-22+・・・+b を用いて、
      (0.99)10=(1−0.01)10=1−10・0.01+45・0.0001−120・0.000001+・・・
      これは、ほぼ
0.90・・・ である。(第3項の45・0.0001以下急速に小さくなる!)